みたに内科循環器科クリニック 院長 三谷 和彦先生 2015年8月

平成18年12月より泉区で開業しております、みたに内科循環器科クリニックの三谷と申します。
今回は、三四会の先生方に、私が横浜市医師会でおこなっている活動についてご報告したいと思います。
最近、街中でも自動体外式除細動器(AED)をよく見かけるようになり、また専門医資格の取得に心肺蘇生講座の受講が必須になるなど、心肺蘇生を巡る環境は充実しつつあります。それと同時にクリニックでの心肺蘇生に対して厳しい目が向けられる機会も多くなりました。
そこで、横浜市医師会では、2010年にクリニック内での心肺蘇生率向上を目指して、アンケート調査をおこないました。その結果、60%の医師が心肺蘇生の実技訓練を受けていない実態が明らかになりました。その理由を尋ねたところ、「参加したくても時間がない」、「参加方法がわからない」などの意見が多数を占め、実技訓練に気軽に参加できる機会があれば、参加人数が増加する可能性が示唆されました。
また、クリニックスタッフに心肺蘇生の訓練を行っている施設は23%に過ぎないことが明らかになりました。しかし、心肺蘇生の必要性は認識しているため、スタッフも含めたクリニック単位で参加する心肺蘇生の実技訓練があれば参加するかを尋ねたところ、4割以上が参加を希望しました。
アンケート調査の結果、多くの開業医の先生方が心肺蘇生の必要性は認識しているが、時間の制約などにより、現在行なわれているBLS・ALSなどの心肺蘇生の実技訓練では、十分に対応できない事が判明しました。
これまで心肺蘇生法として、病院勤務医向けのALS(advanced life support)、一般市民向けのBLS(basic life support)がありますが、クリニックに適したシステムはありませんでした。クリニックでは通常医師が1人しかおらず、クリニック内で心肺蘇生が必要な状況が発生した場合、医師はスタッフと協力して、心肺蘇生することになります。また、街中や病院と異なり、クリニックでは、心肺蘇生に参加する人は、毎回同じスタッフとなります。そこで、クリニックの医療体制に即した心肺蘇生の実技訓練が必要と考え、CLS(clinic life support)システムを立ち上げました。
CLSは、クリニック単位で、医師と看護師や事務員などクリニックスタッフ(4〜6名)をチームとして参加します。家庭を持つ看護師や事務員が多いクリニックでは1日コースへの参加が困難であるため、半日コースで合計150分の講習会としました。
実際の場面を想定して、クリニック内で患者が心肺停止した時にどのように協力して心肺蘇生を行い救急病院に搬送するかを中心に、2時間半の実技訓練を行う講習会です。
クリニック毎に医師や看護師の救急手技の習熟度が大きく異なる現状に合わせて、実技講習終了後には、指導医がクリニックスタッフに聞き取り調査をして、個々のクリニックへの改善提案やクリニックの実情に即した心肺蘇生法を指導するきめ細かい対応も行っています。
毎年2回6月と12月に横浜市医師会と横浜市立大学が共同で講習会を開催しています。今後、横浜市内のすべてのクリニックスタッフが、消防訓練と同じように、1年~数年に1回、CLS講習会を受講できるようにしたいと思います。そのために、横浜市内の慶應大学医学部関連病院の先生方のご協力もいただき、CLS講習会を開催していただければと思いますのでよろしくお願いいたします。また、CLS講習会に参加したい開業医の先生方がおられましたら、私までご一報いただければと思います。